FX自動売買を始めるにあたってどの通貨ペアを選べばいいのでしょうか?
そもそもFX自動売買に適した通貨ペアとは何でしょうか?
主要通貨ペアの特徴
まずは各通貨ペアの特徴を理解しましょう。
米ドル円(USD/JPY)
世界の基軸通貨である米ドルは取引高が圧倒的に多く、米国の経済指標は他国の指標より注目されます。
中でもISM製造業景況指数、非農業部門雇用者数、貿易収支、GDPは注目度が高く、指標結果が良ければドル買い、悪ければドル売りとなります。
またアメリカの政策金利は毎月開催されるFOMCで決定され、一般的に利上げでドル買い、利下げでドル売りの要因となります。
米ドル円の月足チャート
2007年に米低所得者向け住宅融資サブプライムローン問題を発端に急激に円高が進行しました。東日本大震災が発生した2011年3月には1995年4月につけたドル円史上最安値79.75円を約16年ぶりに更新し、ドル円史上最安値76.46円を記録しました。
さらにギリシャ発のヨーロッパ金融危機で世界的な金融不安が広がり、2011年10月31日にドル円史上最安値75.54円を再更新しています。
ユーロ米ドル(EUR/USD)
ユーロ米ドルは世界で最も取引される通貨ペアです。そのため、流動性が高く活発な値動きを見せるのが特徴です。
日本時間の夕方にロンドン市場が開き、そのあとニューヨーク市場が開きます。つまり、午後10時ごろから深夜にかけてロンドン市場とニューヨーク市場の開場時間が重なり、ユーロ米ドルの取引は活発化し、値動きも大きくなる傾向にあります。
ユーロ米ドルの月足チャート
2006年以降、ユーロ米ドル相場はユーロ円同様に経済の堅調ぶりからユーロ買いが進み上昇トレンドとなりました。2008年7月には1ユーロ=1.6ドル台を記録し史上最高値を更新しました。
しかしアメリカ発のサブプライムショックによる金融危機で史上最高値更新後わずか3ヶ月程で1.2327まで下落し、その後もギリシャ発のヨーロッパ金融危機、世界同時株安の影響で低調に推移しています。
ユーロ円(EUR/JPY)
1999年1月にEU加盟国中11か国で単一通貨ユーロを導入し、2002年1月からユーロ貨幣の流通が始まりました。現在ヨーロッパの25の国で使用されています。
ユーロは第二の基軸通貨と呼ばれ、米ドルに次ぐ取引規模を誇っています。
ユーロ円の月足チャート
2005年12月以降ユーロ圏の利上げ期待と経済の堅調ぶりにユーロ買いが進み、2005年から上昇トレンドとなり、2008年7月23日には1ユーロ=170円に迫る169.93円と史上最高値を更新しました。
しかしアメリカ発のサブプライムショックによる金融危機で史上最高値更新後わずか3ヶ月で2008年10月27日に113.58円まで一気に円高進行しました。
2011年12月30日にはヨーロッパ金融危機、世界同時株安の影響で約10年ぶりの100円割れとなる99.55円を記録、さらに翌2012年7月には94.10を記録しました。
ポンド円(GBP/JPY)
かつての基軸通貨「英ポンド」。第一次世界大戦後にアメリカに経済大国の座を譲り、1932年には米ドルが英ポンドに変わり基軸通貨となりました。
英ポンドはFXで人気の高い通貨です。その理由はボラティリティの高さ(為替変動率)にあり、1日に3円程動くことがあります。短期間で収益をあげることができる反面、高レバレッジで取引をすると大きな損失を被る危険があります。
ポンド円の月足チャート
2009年1月にポンド/円は史上最安値を更新し118.79円となり、1995年4月につけた128.21円以来の最安値更新となりました。
2011年9月22日ヨーロッパ金融危機の影響で2年8ヶ月ぶりに史上最安値を更新し116.81円を記録しました。
豪ドル円(AUD/JPY)
日本でゼロ金利政策が継続される一方でオーストラリアは金利水準が高いことから豪ドル建ての外国債券や外貨預金に人気があります。
高金利通貨であり資源国通貨という側面を持ち、金をはじめとする資源価格が上昇すると、オーストラリアからの輸出額が増えることから外国為替市場で豪ドルを買う動きが強まります。
豪ドル円の月足チャート
オーストラリアの経済不況により2000年には55円台前半をつけた豪ドルですが、その後は所得税や金融緩和が個人消費を促進させ、景気は回復しました。
高金利に注目した日本からの投資が急増し、2007年4月には約10年ぶりに100円台をつけました。
2007年8月のサブプライムショックで107.69円から86円まで1ヶ月で急落しましたが、その後少しずつ回復し2008年7月には、104円台をつけましたがアメリカ発の金融危機により史上最安値55.02円を記録しました。
NZドル円(NZD/JPY)
NZドルは豪ドルと同様に高金利通貨としてFXでは人気の高い通貨です。
ニュージーランドの最大の輸入/輸出相手国はオーストラリアで貿易面での依存度が高くNZドル/円と豪ドル/円の為替レートは同じような動きをするのが特徴です。
高金利通貨ゆえにNZドルと豪ドルは日本の個人投資家に人気が高い通貨ですが、米ドルやユーロと比べると市場規模が小さいため、投資会社による巨額な資金で売買されると急激に相場が変動する可能性のある通貨でもあります。
NZドル円の月足チャート
ニュージーランドの経済不況によりNZドルは2000年10月に史上最安値41.87円を記録しました。
その後景気の回復と財政黒字によりNZドルの買いが進行、高金利に注目した個人投資家からの投資が急増し、2007年7月には97.75円まで上昇しましたが、2007年サブプライムショック、2008年リーマンショックの影響で急落した場面もありました。
カナダドル円(CAD/JPY)
資源国通貨であるカナダドルの石油埋蔵量はベネズエラ、サウジアラビアに次いで世界第三位。カナダドルレートの変動要因は、原油・金の産出国であるため原油価格・金価格の動向や、カナダの輸出の8割以上はアメリカ向けであるためアメリカの経済状況に左右されます。
カナダドル円の月足チャート
アメリカとの経済面での結びつきが強いカナダは、1995年4月に米ドル/円相場が79.75円を記録した際、カナダドル/円は史上最安値57.76円を記録。カナダドル/円の為替レートはアメリカの経済状況、米ドル/円の為替レートに強く影響されます。
その反面、資源国通貨として、原油価格が高騰していた2005年以降上昇し、またカナダ経済が好調なことから2007年11月に125.54円を記録しました。
しかしアメリカ発リーマンショックによる金融危機の影響により2008年10月頭に100円台をつけていたカナダドル/円相場がわずか1ヶ月で70.9円まで急落。1ヶ月で30円程レートが動きました。
スイスフラン円(CHF/JPY)
永世中立国のスイスフランはテロや有事の際に資金の避難先として選ばれ「有事のスイスフラン買い」の傾向が強い通貨です。
有事の際は瞬間的にスイスフランが買われ、また低金利通貨であることからスワップポイントの投資対象とならず短期トレード向きの通貨です。
スイスフラン円の月足チャート
スイスフラン/円相場は1990年に110円台にのせていましたが、2000年9月に国内景気悪化の影響で史上最安値58.75円を記録。その後2001年9.11同時多発テロ、2003年イラク戦争勃発、2006年北朝鮮ミサイル発射・イスラエル軍によるレバノン侵攻など有事の際はスイスフラン買いが活発となり、2008年7月には105円のせと堅調に推移していました。
しかしリーマンショックの影響により大きく下落し、2008年の年間変動幅は30.05円を記録しました。
一旦下落したスイスフランでしたが、徐々に上昇に転じ2011年8月には108円台を越えました。そこで2011年9月6日スイス中央銀行は「過度なスイスフラン高を抑制する為に、無制限介入を実施する」ことを発表。
ところが2015年1月15日、スイス中央銀行は上限にしていた1ユーロ=1.20スイスフランに近づくと、突如上限を撤廃。ユーロ/スイスフランは1.20フランをあっさり割り込むと、0.82フラン前半まで、約20分でおよそ3800pipsの大暴落。
スイスフランのこの動きは他の通貨ペアにも大きな影響を与え、為替市場は大荒れとなりました。
南アフリカランド円(ZAR/JPY)
高金利通貨として人気の高い南アフリカランド。流動性の少ない新興国通貨のためボラティリティ(変動幅)が高くリスクの高い通貨ですが、何といっても魅力なのが高金利、政策金利は6.25%(2016年1月現在)もあります。スワップ目的で長期保有する通貨としては最高の通貨になります。
南アフリカランド円の月足チャート
南アフリカランドのような新興国通貨は流動性が低いためボラティリティ(価格変動率)が高いことが特徴です。
これまでの最安値は2008年10月にアメリカ発リーマンショックによる金融危機の影響で記録した7.62円でしたが、2015年後半から中国経済成長の減速により、最安値を切り下げ、2016年1月11日には史上最安値となる6.54円を記録しました。
トルコリラ円(TRY/JPY)
高金利通貨で知られるトルコリラ。トルコは慢性的な経常赤字国で、国内の資金需要を満たすため海外からの資金流入に大きく依存しています。
そのため、先進国の金融政策の変化など、グローバルな資金フローに影響を与える要因によって、株価や為替が大きく影響される傾向があります。
また価格帯が安いことから少ない資金でも運用することができます。
トルコリラ円の月足チャート
2007年ごろは100円近い価格で取引されていましたが、アメリカ発リーマンショックによる金融危機の影響もあって下落を続け、2011年10月にはトルコリラ円史上最安値40.28円を記録しています。
その後、40円~50円台で推移し、2016年2月にはトルコリラ円史上最安値37.63を再更新しています。
通貨ペア別の取引高
下表は国際決済銀(BIS)が3年おきに発表している世界の外国為替市場における取引額(2013年4月の1日平均取引額)です。
ユーロ/米ドルと米ドル/円で全体の4割を占めていることが分かります。
通貨ペア | 取引額(10億米ドル) | 割合(%) |
---|---|---|
ユーロ/米ドル | 1,289 | 24.1 |
米ドル/円 | 978 | 18.3 |
米ドル/ポンド | 472 | 8.8 |
米ドル/豪ドル | 364 | 6.8 |
米ドル/カナダドル | 200 | 3.7 |
米ドル/スイスフラン | 184 | 3.4 |
米ドル/その他 | 1,167 | 21.8 |
ユーロ/円 | 147 | 2.8 |
ユーロ/ポンド | 102 | 1.9 |
ユーロ/スイスフラン | 71 | 1.3 |
ユーロ/その他 | 177 | 3.3 |
豪ドル/円 | 45 | 0.8 |
カナダドル/円 | 6 | 0.1 |
NZドル/円 | 5 | 0.1 |
南アフリカランド/円 | 4 | 0.1 |
ブラジルレアル/円 | 3 | 0.1 |
トルコリラ/円 | 1 | 0.0 |
その他/円 | 42 | 0.8 |
その他 | 89 | 1.7 |
合計 | 5,345 | 100.0 |
出典:国際決済銀行(BIS)Triennial Central Bank Survey of foreign exchange and derivatives market activity in 2013
FX自動売買の通貨ペアの選び方
FX自動売買をする上で通貨ペアはどのように選べばいいのでしょうか?
実は裁量トレードと違って自分がトレードをするわけではないので通貨ペアについてはあまり深く考える必要はありません。
例えばミラートレーダーの場合、ストラテジーによって対応している通貨ペアが決まっています。そのため、ストラテジーを選べば自ずと通貨ペアが決まることになります。ミラートレーダーで利益を上げるために最も大事なのがストラテジー選びですので、通貨ペアについて考える必要はないというわけです。
また同様に選択型システムトレードやMT4でも売買プログラムやEAによって対応している通貨ペアが決まっています。大事なのは売買プログラムやEAの選び方であって、通貨ペア選びではありません。
リピート系発注機能だけは通貨ペア選びが重要
ところが最初に通貨ペアを選択するリピート系発注機能だけは他のFX自動売買と異なり、通貨ペア選びがカギとなります。
リピート系発注機能は基本的にロスカットさせずに長期運用させるため、売買益に加えスワップ益が大きな収益となります。
そのため、豪ドル/円やNZドル/円、南アフリカランド/円、トルコリラ/円といった高金利通貨で運用するのがオススメです。
ただし高金利通貨はボラティリティが大きい傾向にあるため、レバレッジを効かせすぎることなく、低レバレッジで運用し、資金管理を徹底しなければなりません。
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